鯨のうた


「お疲れ様〜!みんなよいお年を!」
「よいお年を!」

定時になり、みんながそんな挨拶をしながら早々に帰宅して行く。
明日から三が日まで会社は年末年始休暇に入る。

みんな一年の仕事を終え、ホッとしたような表情を浮かべていた。

しかし、航はいまだ打ち合わせに出掛けてからオフィスに戻って来ていなかった。

(航、直帰するのかなぁ···)

そう思いながらも、わたしはデスクに座ったまま帰宅しようかを迷っていた。

航に謝らず、モヤモヤしたまま今年を終えたくない···―――

そんなのは、ただ単にわたしがスッキリしたいという、我が儘なだけなのだが。

すると、定時を過ぎた18時25分。
営業部のオフィスに航が戻って来た。

航は、まだオフィスに残っていたわたしの姿を見て驚いていた。

「―――千衣。···まだ帰ってなかったのかよ」
「お疲れ。先方はどうだった?怒られなかった?」

航は気まずそうに自分のデスクに戻ると、「何とか···謝り倒して許してもらったよ」と答えた。

「そっか。なら、良かったじゃない。でも···航が打ち合わせ忘れるなんて珍しいわね。···中谷さんも、営業のスケジュールを把握してるはずなのに。何で言わなかったんだろ」

わたしがそう言うと、航は小さな溜め息をつき「中谷は、そういう奴だ。まぁ、俺のミスだから、あいつを責めれない」と言った。

それから、少しの沈黙が流れる。
社員たちが帰宅し、静かなオフィス内。

そんな中、わたしは思い切って、あの時の話を切り出した。
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