鯨のうた
「―――あ、あのさぁ···、こないだは、ごめん···」
わたしがそう言うと、航はふと顔を上げ「えっ?」と不思議そうな顔をした。
「こないだ、わたし···酷い事、言っちゃったから···」
わたしのトーンの低さに、航は「ふっ」と笑うと「何で千衣がそんな顔してんだよ」と言った。
「な!なんでって···」
「謝らなきゃいけないのは、俺の方だ。あの時は、本当にごめん···。千衣は、何も悪くねーよ」
「でも···、言葉選び、間違えてたなぁって思って···」
そこで再び流れる沈黙。
パソコンなどの機械音がやたらと耳に響いて大きく聞こえた。
「···お前さぁ、何でそんな優しいんだよ」
「えっ?」
航の言葉にわたしはパッと顔を上げる。
航は切なげな表情を浮かべ、わたしを見ていた。
「どうせなら、とことん突き放してくれたら良かったのに。そしたら、諦めもついたのにさぁ」
「そ、そんな事言われても···」
「優しくされると···、また期待しちまうだろ···。俺に希望がこれっぽっちもないなら···、冷たくしてくれよ」
そう言って、航は無理に笑って見せた。
そんな、冷たくだなんて―――
わたしはただ、今まで通り···
同期のままの関係でいたいだけなのに―――
それは、もう無理なんだろうか。
言い合ったり、時にはくだらない事で笑ったりする、元の関係には、もう戻れないんだろうか―――