鯨のうた

『お疲れ様。年末年始は特に予定ないよ。急だけど、明日とかどう?』

雨龍課長からの返信に心臓の鼓動がうるさくなる。

わたしは(すぐに返信したら、待ち構えてたと思われちゃうかな···)と思いつつ、変に時間を置くのはやめようと、すぐに返信をした。

そして突如決まった雨龍課長との予定。
明日の14時に雨龍課長がわたしの自宅まで迎えに来てくれる―――

(どうしよ、和食···何作ろう)

わたしはカップ麺をすすりながら、スマートフォンで和食のレシピを検索した。

凝った料理がいいのか、それとも無理をせず無難なメニューにしておこうか―――

わたしは和食メニューのことで頭がいっぱいになり、そしてまた雨龍課長との時間を作れた嬉しさでその夜はなかなか眠る事が出来なかった。


翌朝。
今日は、朝からチラチラと雪が降っていた。

もうストーブを焚かなくては凌げない寒さだ。

わたしはなかなか眠れなかったにも関わらず、なぜか目がパッチリとしていた。

(きっと、興奮のせいだ···)

それはまるで、遠足が楽しみで眠れなかった幼稚園児のよう。
28歳にもなって恥ずかしいが、自分の気持ちに嘘はつけなかった。

14時に迎えに来てくれるのだから、お昼くらいから支度を進めれば間に合うのだが、午前中のうちにメイクからヘアセットまで完了してしまった。

(気合い入り過ぎかな···)

メイクが変ではないか、崩れていないかを小まめにチェックする。
髪の毛はいつもおろしている事が多いのだが、今日は料理をする為、後ろで一つにまとめてある。

(変じゃないかな···)

正直言うと、ヘアセットは得意ではない。
しかし、簡単な一つ縛りでも可愛く見えるよう、"簡単ヘアセット"で検索して見つけたものに挑戦してみた。

そんなこんなで予定の14時が迫ってきた。
わたしは落ち着かないまま、ソファーに座ってみたり、スマートフォンを確認したり、そわそわしながら雨龍課長が来るのを待っていた。
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