鯨のうた
雨龍課長からの告白にわたしの表情が自然と緩む。
いや、ニヤけてしまったと言った方が正しいだろうか。
こんなに真っ直ぐに告白されたのは初めてだ。
わたしは雨龍課長を見つめると、「わたしでよければ、よろしくお願いします」と答えた。
雨龍課長はその瞬間、わたしを再び抱き締める。
さっきよりも強く、ギュッと―――
「俺は、千衣がいいんだ」
そう言ってわたしを包み込む雨龍課長のぬくもりを身体と心で感じ取る。
わたしはそっと雨龍課長の背中に腕を回し、その幸せを噛み締めた。
「でさぁ、千衣」
「はい」
雨龍課長はふと腕を緩めると、わたしを見つめながら頬に触れてきた。
「もう一度、俺の名前呼んでくれない?」
「えっ」
「下の名前で、もう一度呼ばれたい」
「え、もう一度、ですか?」
改めてそう言われると、まだ呼び慣れていないせいもあり、照れくさくなってしまう。
すると、雨龍課長は「ふふっ」と笑い、「千衣、顔赤い」と言った。
「えっ!いや、これは!」
「可愛いなぁ。俺は何度でも呼べるよ?千衣、千衣、千衣〜!」
「もう···、からかわないでくださいよぉ」
わたしがそう言って、拗ねたように見せると、雨龍課長は「からかってるわけじゃないよ」と言って優しく微笑んだ。
「まあ、そのうち慣れて、自然と呼んでくれるようになったら嬉しいなぁ」
「はい、頑張ります···」
それからわたしたちは、夕飯の準備の続きを再開させた。
お米を炊飯器にセットし終わった雨龍課長、いや、優作さんには「座って待っててください」と言ったのだが、優作さんは「千衣が料理してる姿を見てたい」と言って、わたしの傍から離れなかった。
見られながらの料理は緊張したが、他愛もない会話をしながらの料理だった為、その緊張は自然と解れていった気がする。
優作さんの家のキッチンで料理を作る―――
気は早いが、何だか優作さんの奥さんにでもなれたような気分だった。