鯨のうた

それからテーブルには、肉じゃが、きんぴらごぼう、豆腐とわかめの味噌汁に白米が並べられた。
我ながら、上手く出来たと思う。

優作さんと恋人になってから、初めて共にする食事だ。

「それでは、いただきます」
「召し上がれ」

優作さんは、わたしが作った料理を美味しそうに嬉しそうに食べてくれた。

「めちゃくちゃ美味しいよ!味も濃すぎず、薄すぎず丁度いいし!」
「良かったぁ」

そう言って褒めてくれ、ニコニコしながら頬張る優作さんを年上とはいえ、可愛いとさえ思った。

思い切って自分から連絡して、今日来て良かった。
心の底から、そう思った。

「あ、そういえばさ、千衣って年末年始は実家に帰ったりするの?」

烏龍茶が入ったグラスを片手に優作さんが言う。
わたしは、味噌汁を飲んだ後に「いえ、帰りません。というか、実家と呼べる場所がないんですよね」と答えた。

「えっ、そうだったの?」
「実はわたし、施設育ちなんです。物心ついた頃から片親だったんですけど、母がわたしが5歳の時に再婚して、それでわたしが邪魔になったみたいで施設に預けられたんです。それきり迎えに来る事もなかったので、母親もいないものだと思っています」

わたしの言葉に優作さんは切なげな表情を見せたが、わたしは自分の生い立ちについて何とも思っていない。
だから、サラリと説明してしまったが、優作さんには重過ぎただろうか···

すると、優作さんは「実はね、実家がないのは俺もなんだ」と話し始めてくれた。

「えっ」
「両親は俺が物心つく前に事故で亡くなったらしい。俺も事故が起こった車に同乗してたらしんだけど、奇跡的に俺だけ無傷で助かった。それから母方の祖父母に引き取られたんだけど、俺が中学に上がるタイミングで亡くなった。両親が晩婚だったから、祖父母もかなりの年配だったんだよね」

そう言って、優作さんは烏龍茶を飲み干した。

初めて聞く優作さんの生い立ち。
わたしとはまた違う形で家族を失っていたんだ―――
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