鯨のうた
「祖父母を亡くしてからは、親戚の家に引き取られたけど···まあ、歓迎はされてなかったし、家族のような扱いはされなかったかなぁ。ただ育ててもらった事には感謝しなきゃいけないけどね」
優作さんもわたしと同様にサラリと自分の生い立ちを話す。
わたしのように本当に何とも思ってないからなのだろうか。
それとも、わたしに気遣って気丈に振る舞っているのか―――
しかし、母の記憶がほとんどないわたしなんかより、おじいちゃんおばあちゃんと過ごした記憶が残っている優作さんの方がツライのではないんだろうか。
祖父母を亡くした悲しみと、親戚から歓迎されなかった扱い···―――
きっと、孤独な期間があったはずだ。
「苦労なさってるんですね···」
わたしがぽつりとそう呟くと、優作さんは「いやいや、そんな事ないよ」と笑って見せた。
「わたし、自分の生い立ちは、そこまで気にしてないというか···、深く考えた事はなかったんです。でも、わたしの中にはずっと、自分の家族が欲しいっていう願いがあって···。だから、自然と恋愛体質みたいになって、わたしと一緒を居てくれる人を見つけようとしてきました」
わたしはそこまで言うと、自分の中でフッと自分に笑えてきてしまった。
わたしと一緒に居てくれる人なんと、そう簡単に見つからない。
それを痛いほどに経験してきているから―――
「でも、恋愛ってそんな簡単なものじゃないですね。いつも失敗ばっかりして···、自分でも笑えるくらい。前に"世界一孤独な鯨"の話を聞きましたけど、同じ言語を使っていても、伝わらない、届かない人もいるんですよね―――」
(わたし、何言ってるんだろう···優作さんの前で)
そう思った時だった。
「―――それは、孤独だったからじゃない?寂しかったんだよ、千衣は」
優作さんの言葉がわたしの心にスッと入ってくる。
そう、自分でもわかっていた。
でも、強がってた。