鯨のうた

お泊まり2日目の夜。
今日は大晦日という事もあり、豪勢に二人ですき焼きだ。

「美味しそう〜!」
「奮発して、良い肉買っちゃったからね!」

二人ですき焼き鍋を前にご馳走を頬張り、テレビ画面には毎年大晦日にやっているお笑い番組が流れている。

毎年独りで過ごしてきた大晦日を、今日は大切な人と過ごしている事がまだ信じられない。
まだ夢なんじゃないかとさえ思えた。

「毎年観てるんですか?この番組」

わたしがそう訊くと、優作さんは「そうだね、大体はこの番組つけてるかな」と言った。

「千衣は?」
「わたしは···特に何も。歌番組観ても、いまいち今の流行りについていけないし」
「分かる。俺も今の歌全然分からない」

そう言って流行りに乗れていない自分たちに笑う。

すると優作さんが「いやぁ〜、独りじゃない大晦日は久しぶりだなぁ···」とぽつりと呟いた。

「あ、そうなんですか?」
「うん。毎年独りだよ」

しかし、わたしは"久しぶり"という言葉が気になった。

"久しぶり"という事は、誰かと過ごした過去があるという意味にも捉えられる。

(もしかして、亡くなった元カノさんかな···)

そうは思ったが、わたしは聞かなかった。
もしそうだとしたら、優作さんにツライ事を思い出させてしまう。

それに違ったとしても、誰かと過ごす大晦日があっても全くおかしな事ではない。

「わたしも毎年独りでした。誰かと過ごすのは、施設を出てから初めてです」

わたしがそう言うと、優作さんは一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐに笑顔に変わり「じゃあ、千衣の"初めて"俺がもらえたんだ」と言って、わたしを笑顔にしてくれた。
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