鯨のうた
短い時間だったけれど、そのキスは長くも感じられた。
柔らかな唇がソフトに触れる、フレンチキス。
ゆっくりと唇を放すと、優作さんとは自然と目が合い、お互いに照れ笑いを浮かべた。
「何か、ぎこちなくてごめん···。もっとこう、スッと上手く出来ればいいんだけど」
そう言って反省している様子の優作さん。
しかし、わたしは全く不満を感じなかった。
そのぎこちなさが、今まで女性を拒否し続けてきていた証にもなるし、もっと上手くやれれば···と反省する優作さんの姿さえも愛おしい。
「そんなに気にしなくてもいいですよ」
「いやぁ、俺もう35だよ?35の男がこんな不慣れな感じ···ヤバいでしょ?」
「そんな事ないですって。忘れてしまっているのなら、わたしでまた思い出せばいいだけですよ」
わたしがそう言うと、優作さんは照れ笑いを浮かべ「千衣、ありがとう」と言った。
それから優作さんはわたしの肩を抱き、わたしは優作さんに寄りかかりながらテレビをつけ、ついに始まってしまったカウントダウンをテレビの前で見届けていた。
「そろそろですね」
「そうだね。もう今年も終わるのかぁ〜」
大勢の人たちが集まり新年に向けて盛り上げている。
そこでカウントダウンが始まった。
『10!9!8!7!6!5!4!3!2!1!ハッピーニューイヤー!!!!!』
除夜の鐘を鳴らすチャンネルもあれば、みんなで大騒ぎしているチャンネルもある。
そんな中、わたしたちはお互いの顔を見合わせ、微笑み合っていた。
「明けましておめでとう」
「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくね!」
そう言い合って、わたしたちは握手を交わした後、抱き締め合った。
「あはははは!優作さん、苦しいですよ〜」
「これくらい強く掴まえておかないと、千衣がいなくなっちゃったら困るから」
「居なくなんかなりません〜」
お酒が入っている事もあり、じゃれ合うわたしたちは、まさに"イチャイチャ"ということをしていた。