この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました
誤魔化すのはもう終わり

 タカラ製菓の案件は宏臣のアドバイスで無事に片づき、怒涛の週が終わった土曜日の午後、帆奈美はいつになく緊張しながら駅前にいた。
 つい最近も似たような感覚を経験したな……と記憶を辿って、それが身代わりのお見合いへ向かうときだったと思い出す。

 宏臣から連絡があったのは昨夜。アドバイスの報酬という名目で水族館へ誘われた。

 (どうしてこんなにドキドキしてるの、私)

 お見合い以降、二度会ったときは不意打ちだった。こうして待ち合わせをしているのが不思議でならない。
 なにを着ようか迷っている自分に『なんだっていいじゃない。なに考えてるの』と突っ込みつつ、選んだのは白いドット柄の黒いスカートに、ショート丈の白いブルゾンを合わせたキュートなコーデ。鏡に映る自分を見て、張りきりすぎていないか不安になったけれど、モノトーンだから大丈夫だと無理に言いくるめた。
 そのうえ、こうして極度に緊張している。自分で自分が信じられない。

 そわそわしながら待っていたそのとき、一台の黒い車が目の前に滑り込んできた。見るからに高級そうな車体、場違いなほどの存在感に尻込みする。

 (まさか……)

 そう思っているそばから、運転席の窓がすっと下がった。

 「帆奈美さん」
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