この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました
 「帆奈美、下の名前で呼んでくれ」

 宏臣から甘い声で切望され、拒める人はいるだろうか。

 「……宏臣、さん」

 少し照れながら呼ぶと、宏臣は満足そうに微笑み、すぐに唇を帆奈美の胸元に寄せた。優しく触れられるたび、甘い声が自然と零れてしまう。

 「ぁっ……宏臣さんっ」

 名前を呼ぶごとに、宏臣の動きがどんどん熱を帯びていく。

 「そうだ。もっと呼んで。キミの声で俺の名前を」

 彼の指が優しく体をなぞるたび、帆奈美はシーツをそっと握りしめ、甘い吐息を漏らしてしまう。
 やがてふたりはゆっくりと深く繋がり、吐息が甘く混ざり合っていく。帆奈美は宏臣の背中にそっと腕を回し、何度も名前を呼び続けた。

 重なり合うたびに、体の奥に小さな波紋が広がっていく。触れられるたび、呼吸のひとつひとつがほどけて、境界が曖昧になっていくようだった。
 彼の体温も鼓動も、すべてが自分の中へ溶け込んでくる。
 名前を呼び、応え、また重なっていく。世界にはもう、ふたりしかいないみたいだった。

 高まりきった熱が静かに満ちていき、帆奈美は彼の胸に顔を埋めた。そのぬくもりに包まれながら、ゆっくりと息を整えていく。

 このまま、朝が来なければいいのに。

 そんな想いが、ふと胸をよぎる。

 そうしてお互いの熱をぶつけ合いながら、夜は甘く更けていった。
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