この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました
 返事が遅れたうえ、つい目が泳いだ。噓をつくのが心苦しくて、どうしたって顔に出てしまう。
 でも、すべては宏臣との将来のため。これまで宏臣をそばで支え、彼の母親にも近しい日高が言うのだから、最善の方法だと信じる以外にない。

 そうしているうちに呼び出し音は止んだため、そっと息を吐いた。

 (もうっ、日高さん、空気を読んで……!)

 無理だとわかっていても、そう思わずにいられない。
 前回、宏臣と会っているときにも日高から着信があり、同じように誤魔化した前科がある。

 帆奈美を見つめる宏臣の静かな目が、なにもかもお見通しのようで、冷や汗が額に浮かんだ。

 「まだ食べますよね?」
 「そうだな」
 「じゃあ、じゃんじゃん焼きましょう」

 不穏になりかけた空気を払拭すべく、ハイテンションで場を盛り上げる。
 そうして準備した材料は、すっかり綺麗にふたりのお腹の中に収まった。

 「食べたな……」
 「食べましたね……」

 顔を見合わせて、どちらからともなく笑いがこぼれる。テーブルの上はすっかり片づいて、さっきまでの賑やかさが嘘のように落ち着いた空気が流れていた。
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