この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました
 「正直に言えば、面白くはなかった。ほかの男と会ってると知って、平気でいられるほどできた男でもないしな」

 ハンドルを握る手に、わずかに力がこもる。

 「……ごめんなさい」
 「だから今夜は――」

 そこで一度言葉を切り、宏臣はわずかに息を吐いた。

 「ちゃんと埋め合わせてもらう」

 落ち着いた声だったがどこか熱を含んでいるため、心臓が大きく跳ねる。
 それ以上宏臣はなにも言わず、車は静かにスピードを上げた。

 やがて見慣れない街並みに変わり、地下駐車場へと滑り込む。エンジンが止まると同時に、車内に静寂が満ちた。

 「今夜は朝まで一緒にいてもらう」

 短く告げられ、ドアが開く。そのまま手を引かれて歩きだした。
 乗り込んだエレベーターを降り、彼の部屋に招き入れられる。部屋に入った瞬間、背後でドアが閉まる音がし、直後に強く腕を引かれていた。
 そのまま抱きすくめられる。息を整える間もなく唇が重なった。
 これまで抑えていたものが、一気に溢れ出したかのようなキスだった。深く、逃がさない口づけだ。

 「ん……」
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