この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました
 宏臣は、ふっと小さく笑った。

 「珍しいですね。そんなことを言う人間は初めてですよ」
 「そうですか?」
 「ええ。たいていは、まず家の話から入ります」

 含みのある言い方だったが、帆奈美は気づかないふりをして次の一手を放つ。

 「それよりも今、私が最も興味があるのは推し活なので」

 リストの五番目、推し優先宣言である。

 「あぁ、よく聞く言葉ですね。愛理さんもその手の活動をしているんですか」
 「はい。鳳麗歌劇団ってご存知ですか?」
 「ええ、まぁ」

 宏臣が曖昧に頷く。東城ホールディングス同様、知らない人のほうが少ないだろうけど。

 「その公演をなによりも優先しています。遠征もあるので忙しいですし」
 「遠征?」
 「全国をまわるんです」

 大好きな話題になったため、ついきらきらと目を輝かせる。

 「将来、結婚するとしても、それは譲れません」

 なので、大企業の後継者を支えるような器ではない、妻には向かないと言ったつもりだ。
< 17 / 172 >

この作品をシェア

pagetop