この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました
 口元には穏やかな笑みが浮かんでいる。しかし視線は、逃がさないと言わんばかりに真っすぐだ。

 「連絡先を交換していただけますか」

 さらりと言われたひと言に、帆奈美の心臓が跳ねた。

 (なんで!? どうして!?)

 振られるはずでは? 引かれるはずでは?
 フルーツパフェも結婚願望なし宣言も、推し優先発言も全部投下したのに。

 (気に入られる要素、どこにあった??)

 目の前の男は、穏やかな表情を浮かべている。
 けれど、どことなくおかしい。たしかに口元はきれいな弧を描いているのに、目の奥が少しも揺れていないのだ。
 普通なら戸惑うはずの発言をいくつも重ねたのに、動じた気配がない。むしろ観察していると表現したらいいだろうか。まるで珍しい展示物でも眺めるかのように。

 宏臣はテーブルに置いたカップの取っ手を指先でなぞった。無意識の仕草のようでいて、どこか計算された動きにも見える。
 そして一瞬だけ視線を落とし、すぐに帆奈美へ戻す。そのタイミングが妙に正確だ。
 考えている。こちらの言葉を、ひとつ残らず分解しているような仕草だ。

 さっきからそう。問いかけるとき、必ず一拍置く。ほんのわずかに間をあけてから、核心を突く。まるで答えを誘導するみたいに。
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