この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました
 「迷惑ですか?」

 穏やかな声音でありながら、断るのを許さない強さを秘めている。

 「い、いえ……」

 反射的に否定してしまった自分に、内心で頭を抱えた。
 宏臣がわずかに目を細めた。楽しんでいる顔だ。

 (この人……)

 引いているのではない。試しているのだ。
 帆奈美がどこまで本音で、どこから演技なのか。どんな反応を返すのか。
 それを静かにたしかめながら、余裕を崩さない。しかも決して押しつけがましくない。 強くも弱くもなく、ちょうどいい圧で迫ってくる。
 逃げ道を残しているようで、実はきれいに塞いでいる。穏やかな顔した変な人だ。
 普通ならここで「考えさせてください」とか、「今日はありがとうございました」と流れが終わるはず。それなのに彼は、もう次の約束を当然のように前提にしている。
 
宏臣はポケットからスマートフォンを取り出した。
 動作が無駄なく滑らかで、まるで商談の一部のように自然だ。画面を立ち上げたまま、やわらかく首を傾げる。

 「愛理さんがお嫌でなければ」

 その言い方もまた絶妙だった。主導権はこちらにあるようでいて、実際は選択肢がひとつしかない。
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