この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました
 ***

 ホテルを出たあと、宏臣は乗り込んだ自分の車のシートに背を預け、先ほどの出来事を思い返した。
 三木愛理――老舗食品メーカーの社長令嬢。

 「……あれが?」

 思わず笑いが漏れた。
 話に聞いていた人物とはずいぶん違う。
 三木愛理は品行方正で人当たりがよく、誰にでもにこやかで波風を立てない。いかにも良家のお嬢様という評判だったはずだ。
 だが今日会った女は違う。波風どころか、最初から嵐を起こしていた。
 人づてに聞く話と、実際に会う人物は案外違うのはよくある話。少なくとも、自分がそうであるように。

 (わざとか? いや、計算にしては雑だ)

 だが、素ではないだろう。

 「おもしろいじゃないか」
 あんな女は初めてだ。

 呟きながらポケットからスマートフォンを取り出す。追加されたばかりの連絡先の名前を見て、宏臣は口角をぐっと上げた。
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