この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました
 役員たちは慌てて頷いた。

 「おっしゃる通りです。再度検討します」
 「お願いします」

 やわらかく微笑んでそう言うと、会議はあっさり終わった。
 会議室を出て副社長室に向かいながら、宏臣は心の中で小さく肩をすくめる。

 (最初からそのくらい計算しておけばいいのに)

 もっとも、口には出さない。穏やかに指摘すれば、相手の顔を潰さず物事は進む。それが、東城家の人間として身につけた処世術である。

 幼い頃から宏臣は、〝東城家の宏臣くん〟として扱われてきた。学校でも家同士の付き合いでも、向けられる視線の多くは本人ではなく家柄を見ている。
 笑顔で近づいてくる人ほどなにを欲しがっているか、どこで評価を釣り上げようとしているか学生時代から嫌というほど見てきた。だから心の中では、〝はいはい、次は家柄ですか〟〝それ、俺じゃなくて東城家に言ってますよね〟と冷静に切りわけている。

 そしてそんな本音は胸の内にしまい込んだまま、宏臣はいつもの笑みを浮かべる。愛想よくしていれば、たいていのことは角が立たずに進むと学んだ。
 だから宏臣は、今日も穏やかに微笑む。――少なくとも、表向きは。

 役員たちが頭を下げる中、宏臣は部屋を出て副社長室へ戻った。
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