この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました
 愛理が目を点にする。受け入れられるとは思ってもいなかったというような顔だ。
 宏臣は手を上げて店員を呼び、コース料理に加え、愛理が所望したステーキを注文した。

 ほどなくして運ばれてきたワインで乾杯をする。

 「では早速、愛理さんが結婚に消極的な理由を聞かせてください」

 愛理はグラスをテーブルに置き、口元をナプキンで軽く拭ってから宏臣を見た。意を決したような目だ。

 「この結婚を望んでいる父には申し訳ないんですけど、私は今、推し以外には考えられないんです」
 「鳳麗歌劇団ですね」

 愛理の目が丸くなる。

 「覚えてたんですか」
 「印象的でしたから」

 ああいった場で推し活を話題にする女性はいないと言っていい。どちらかといえば隠しておきたい趣味だろう。

 「どういうところに惹かれるんですか?」
 「あの世界観に惹かれるんです。現実を忘れられる感じが好きで。男役さんの所作の美しさには見惚れてしまいますし、あれは鳳麗ならではだと思います。歌もダンスも衣装も全部が華やかで、観るたびに気持ちが上がるんです」
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