この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました
 愛理は完全に固まった。

 「えっと……?」
 「それに、自分の好きなものを大事にできる人のほうが信用できます」

 これは本心だ。家の名声や立場に惹かれる人間は多い。だが、そういう人間は大抵、自分の価値観を持っていない。
 その点、この女性は違う。少なくとも、推しの話をしているときの表情は本物だ。

 「で、でもですね、公演は年に何回もあるんです。グッズも東城さんが引いてしまうくらい買います。なんならグッズのためだけの部屋も必要なくらいなんです」
 「そのくらいの部屋なら用意しますよ。どのくらいの広さが必要ですか?」
 「そ、それは……今すぐどのくらいなんて答えられません。それに家のこととか、ちゃんとできる自信もありませんし」
 「ハウスキーパーを雇えば済むので問題ありません」

 愛理は困った顔でテーブルに目を落とした。

 (……うまくいかない、という顔だな)

 宏臣はそこで、ふと気づく。
 これまで自分は、縁談の席では常に同じことをしてきた。

 相手の言葉や仕草を観察し、この結婚はないと思える理由を静かに探す。家柄も条件も整っている相手ばかりだからこそ、断るための材料は必要だった。
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