この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました
 しばらく沈黙が落ちる。窓の外では庭の噴水の水音がかすかに聞こえていた。
 やがて愛理は観念したように肩を落とした。

 「わかった」

 ぽつりと呟く。

 「やっぱり、このまま続けるのはまずいよね」
 「うん」
 「帆奈美ちゃんを巻き込んだまま、どんどん話が進むのも怖いし」

 そう言って、愛理は顔を上げた。今度は真面目な顔だ。

 「帆奈美ちゃんは、もう東城さんに会わないでいい。私、どうにかお父さんに話してみる」

 愛理は両手で拳を握り、「頑張るぞ」と自分を鼓舞した。
 ようやく話が通じたようで、肩から力が抜けていくのを感じる。

 (……でも、推しの話をあんなにちゃんと聞いてくれたのって東城さんが初めてだったな)

 宏臣は相槌を打ちながら、ときに質問を返しながら、帆奈美の話をよく聞いてくれた。そんなふうだから、つい夢中になって話してしまったのだけれど。

 (楽しかったな……)

 ハラハラしながらも彼との会話を楽しんだ自分を思い返し、なんとなく寂しいような残念なような気持ちに包まれた。
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