この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました
 視線を落とし、無理やり口元に笑みを作った。
 鉄板の上で炎が舞い、焼き上がった肉が切り分けられていく。香ばしい匂いが広がる中、宏臣はすぐにはなにも言わなかった。

 (やっぱり変に思われたよね。いきなり自分の弱みなんて持ち出して……)

 余計なことを言ってしまった後悔が広がりはじめたそのとき。

 「べつに変じゃない」

 落ち着いた声が返ってきた。
 つられるようにして顔を上げる。宏臣はいつもの穏やかな表情に戻っていたが、その目だけは真っすぐこちらを見ていた。

 「むしろ、やっと普通に話してくれたなって思った」
 「……え」
 「最初から、わざと嫌われるように振る舞ってただろ」
 「それはその……」

 まさにその通りで言葉が続かない。

 「無理に踏み込む気はないけど、引っ込める必要もない」

 静かな声ではっきりと言った。逃げ道を残しているようで逃がさない言い方だ。
 計算しつくされた距離感に、また心臓が落ち着かなくなる。

 「ほら、冷める前に食べよう」
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