婚約が嫌で男装執事になったのに~配属先が婚約者の元でした~【完】
EP:29☆クリスタル様という人!
馬車が止まって窓から外を見ると、目の前に広がるのは、この国で一番大きな立派な建物……王宮。
本当に来てしまった。
目の前の建物を見て、実感した瞬間、あんなにも気合いの入っていた私の指先は、緊張で小さく震え出す。
小さく震えながら、アル様に声をかけられるまで馬車の中で待つ。
すると、カチャリと馬車の扉が開くと、アル様が現れた。
「ごめん、待たせたね。周りの警備も一段落したんだけど……って大丈夫かい?」
「だ、大丈夫ですっ!!」
私の様子を見て一瞬目を見開くと、眉を下げて優しく微笑む。
そして、私の手元に視線を落とした。
「手がすごく震えてる」
「あ……」
強がっていたけれど、震えが止まらなくて気まずくなる私。