婚約が嫌で男装執事になったのに~配属先が婚約者の元でした~【完】
にっこりと笑う私を、執事さんはお屋敷の中へと案内してくれた。
ものすごく広いお屋敷の中に入ると、階段をのぼり最上階にある部屋の前へ案内される。
そこは他の部屋の扉とまったく雰囲気が違っていて、目の前には豪華な扉があった。
すごいなぁ……うちのお屋敷とは何から何まで違うなぁ……
なんて感心していると、執事さんは私に振り返り少しだけ恐ろしいことを言ってきた。
「この執務室の中に主人がいるが、少し機嫌が悪いから粗相のないように挨拶をしてきなさい。私は仕事があるのでこれで失礼するよ。すまないね」
申し訳なさそうに笑う執事さんは忙しそうにいそいそと去っていった。
一人で挨拶……よしっ!
モラハラ男に比べればこんな事だって全然平気だ。
どんなに怖いおじ様公爵にだって私は負けないんだからっ……!!
この手で衣食住を掴んでみせるっ!!
私は拳を握ると扉を見据えて気合を入れた。
そして、心を落ち着かせるために深呼吸をすると扉をノックする。