今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜
*
一週間後。
東京のオフィス。
「おかえりなさい」
エレベーターを降りた瞬間、
快浬さんがいつもの穏やかな笑顔で立っていた。
「ただいま戻りました」
「いい顔をしています」
「そうですか?」
「はい。〝ちゃんと休んできた人の顔〟です」
会議室に入ると、わたしはノートを開いた。
「お土産、たくさん持ってきました」
「楽しみにしていました」
母の話。
父の話。
近所のおばあちゃん。
元カレの〝近すぎる同線〟の話。
快浬さんは、
一つ一つを丁寧に聞きながら、メモを取る。
「つまり――」
ひと通り聞き終えたあと、
快浬さんがまとめるように言った。
「〝今日はここまでライト〟に——」
「〝ちょっとした気遣い〟が、必要だと」
わたしは、強くうなずく。
「ライトが〝ここまで〟を決めてくれて、人が〝ここから〟を選べる場所」
「そこに何を置くか、どう過ごすかは、全部その人次第でいい」
「それは、とても暁らしい〝次の一手〟だと思います」
快浬さんの目が、少しだけ熱を帯びる。
「〝終わりの自信〟の次に、〝ここからの余白〟を提案するキッチン」
会議室のホワイトボードに、新しい文字が並ぶ。
『新商品コンセプト案仮:Calma《カルマ》――〝今日はここまで〟のあと、〝ここから〟を灯すキッチン』
地元で拾ってきた言葉たちが、
新しいプロジェクトの輪郭を描き始めていた。