今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜
第四章 今日はここまで
開発本部の会議室。
長テーブルには、
商品企画部、開発本部、営業部から選抜されたメンバーが並んでいた。
スクリーンには、
新シリーズの仮パッケージデザインと、
『今日はここまでライト』を中心にしたキッチン全体のレンダリング。
新商品のプレゼンで少しばかり顔が強張っていると、
資料に小さな付箋が貼ってあることに気づく。
『全部答えようとしなくていい。分からないことは、僕に振ってください』
いつ書いたのか分からないそのメモに、
わたしは胸がぎゅっと締めつけられる。
「それでは、暁の新商品シリーズ〝Calma《カルマ》〟の最終案をご説明します」
快浬さんが立ち上がる。
隣では、わたしがタブレットを持ち、
補足資料の準備をしていた。
「コンセプトは、〝今日はここまで〟のあと、〝ここから〟を灯す光〟。そして、〝家族の時間〟を守るキッチンです。〝今日はここまでライト〟を中核に、〝ここから一緒に〟の体験を設計し直しました」
ユーザーインタビューのコメントが、スライドに映る。
『〝全部片づけられなかった自分を責める時間が減った〟』
『〝今日はここまでって、自分で線を引ける感じがする〟』
『〝家族の時間が増えて、子どもたちが喜んでる〟』
「今までは『今日はここまでライト』で罪悪感を減らすだけでした。ですが——」
スクリーンには、
光の動きのシミュレーションに、
洗い物の動画が映し出される。
シンクの中が溜まってきた状態でタイミングよく、
ふわりと灯り、
ほんの短いチャイム音が鳴り、
自動で水が流れてくる。
「この光と音が、〝無理をさせてしまう〟というラインを知らせてくれます」
わたしは続ける。
「ライトがない状態でも、片づけ率自体は大きく変わりませんでした。しかし、〝洗わないといけない責任感〟を一緒に分かち合うことで、〝明日もこのキッチンを使おうと思える〟という声が増えました」
営業部のメンバーが、
腕を組みながら画面を見る。
「競合A社は、〝可視化〟〝時短〟を訴求しています」
「暁は、〝心の着地〟と〝明日に向かう気持ち〟を訴求する」
快浬さんが、
ホワイトボードに二つの円を書き、
重なる部分に線を引いた。
「ターゲットは似ていますが、勝負する価値は違います」