今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜
デモンストレーションが始まると、
参加者はそれぞれのテーブルで作業を始める。
「玉ねぎは、繊維に沿って薄切りにしてください」
わたしは、手元を見せながら説明する。
「包丁、苦手な方は声かけてくださいね」
「はーい、包丁は得意なので大丈夫でーす」
玲奈さんのテーブルから、元気な声が飛ぶ。
「むしろ、この人より上手いかも」
さりげなく快浬さんを指さす。
「学生のとき、私がだいぶ仕込んだからね。〝包丁の持ち方からやり直し〟って」
「……そんなことも、ありましたね」
快浬さんが、少しだけ視線をそらす。
——ああもう、そういう具体的な過去エピソード、やめてほしい。
胸のあたりが、
じりじりと焼けるように熱くなる。
「春日さん、手元、大丈夫?」
高梨さんが、小さな声で耳打ちする。
「え、あ、はい」
見れば、自分の手元の玉ねぎが、
明らかに厚さバラバラになっていた。
——集中できていない……というより元々包丁捌きは皆無だけど。
プロジェクト担当として、
あるまじき状態だと分かっていたとしても、
元カノの存在感が、
どうしても視界から消えてくれなかった。