今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜

デモンストレーションが始まると、
参加者はそれぞれのテーブルで作業を始める。



「玉ねぎは、繊維に沿って薄切りにしてください」



わたしは、手元を見せながら説明する。



「包丁、苦手な方は声かけてくださいね」



「はーい、包丁は得意なので大丈夫でーす」



玲奈さんのテーブルから、元気な声が飛ぶ。



「むしろ、この人より上手いかも」



さりげなく快浬さんを指さす。



「学生のとき、私がだいぶ仕込んだからね。〝包丁の持ち方からやり直し〟って」



「……そんなことも、ありましたね」



快浬さんが、少しだけ視線をそらす。


——ああもう、そういう具体的な過去エピソード、やめてほしい。



胸のあたりが、
じりじりと焼けるように熱くなる。



「春日さん、手元、大丈夫?」



高梨さんが、小さな声で耳打ちする。



「え、あ、はい」



見れば、自分の手元の玉ねぎが、
明らかに厚さバラバラになっていた。


——集中できていない……というより元々包丁捌きは皆無だけど。


プロジェクト担当として、
あるまじき状態だと分かっていたとしても、
元カノの存在感が、
どうしても視界から消えてくれなかった。
< 109 / 200 >

この作品をシェア

pagetop