今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜
「では、一品目の〝仕事以外の話〟は、春日さんの番です」
「私ですか?」
「はい。〝このコースが終わるまでに、お互いのことを、仕事以外で一つずつ知る〟というテーマでどうでしょう」
「そんなルール、いつ決まりました?」
「今、勝手に決めました」
ずるいな、と思いながら、
悪くないと思っている自分がいる。
「じゃあ、私は……」
一瞬だけ迷って、わたしは口を開いた。
「キッチンの仕事をしてなかったら、何になりたかったですか」
「――難しいですね」
快浬さんは、少しだけ目線を落とす。
「学生のころから、〝暮らし〟とか〝家〟に関わる仕事がしたいとは、ずっと思っていました」
「家、ですか」
「ええ。ただ、〝家を作る人〟より、〝そこでの時間を作れる人〟になりたかった」
言葉を選ぶように、ひとつひとつ、丁寧に。
「だから、もし暁に入っていなかったら、たぶん、どこかの小さな喫茶店を手伝っていたかもしれません」
「喫茶店?」
「コーヒーを淹れて、常連さんと〝未来を語り合う〟人」
そのイメージが妙にしっくりきて、
わたしは、思わず笑ってしまった。
「似合いますね、喫茶店のマスター」
「〝マスター〟と言われるほど、人付き合いは得意ではありませんが」
「でも、〝アイデア〟を見つけるのは、きっと上手なんだろうなって」
料理は、次の皿へと進んでいく。
パスタ、魚料理、肉料理。
一皿ごとに、ひとつだけ仕事の話をし、
ひとつだけ仕事以外の話をする。
学生時代の失敗談。
実家の話。
好きな季節と、嫌いな天気。
気づけば、『仕事以外』の話題のほうが多くなっていた。