今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜
その日の夜。
フロアに残っているのは、
数人だけになっていた。
わたしは、
ログ解析の画面から目を離せずにいたが、
ふと気づくと、デスクの端に、
小さな付箋が置かれていた。
『今日はここまでライト 23:00 そろそろ消灯時間です』
見慣れた字。
見慣れたフレーズ。
時計を見ると、
ちょうど二十三時を少し過ぎていた。
顔を上げると、少し離れたデスクで、
快浬さんが資料をまとめている。
目と目が合う。
彼は何も言わず、軽く頭を下げた。
「……分かりました」
わたしは小声で返事をして、
ノートパソコンをシャットダウンした。
オフィスの外。
自動ドアが閉まるギリギリのタイミングで、
快浬さんが追いついてくる。
「お疲れさまでした」
「お疲れさまです」
夜のビルの前。
誰もいない歩道。
ようやく、
ほんの少しだけ、表情を緩めてもいい場所。
「ちなみに、あの付箋のライトは、誰が設定したんでしょうか」
「〝人間版ここまでライト〟の設計者です」
「それは、とても信頼できそうですね」
ふたりで並んで駅へ向かいながら、
ごく自然に歩幅が揃う。
手は繋がない。
けれど、肩と肩の距離は、
以前よりほんの少しだけ近かった。