今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜

その日の夜。

フロアに残っているのは、
数人だけになっていた。

わたしは、
ログ解析の画面から目を離せずにいたが、
ふと気づくと、デスクの端に、
小さな付箋が置かれていた。



『今日はここまでライト 23:00 そろそろ消灯時間です』



見慣れた字。

見慣れたフレーズ。

時計を見ると、
ちょうど二十三時を少し過ぎていた。

顔を上げると、少し離れたデスクで、
快浬さんが資料をまとめている。

目と目が合う。

彼は何も言わず、軽く頭を下げた。



「……分かりました」



わたしは小声で返事をして、
ノートパソコンをシャットダウンした。

オフィスの外。

自動ドアが閉まるギリギリのタイミングで、
快浬さんが追いついてくる。



「お疲れさまでした」



「お疲れさまです」



夜のビルの前。

誰もいない歩道。

ようやく、
ほんの少しだけ、表情を緩めてもいい場所。



「ちなみに、あの付箋のライトは、誰が設定したんでしょうか」



「〝人間版ここまでライト〟の設計者です」



「それは、とても信頼できそうですね」



ふたりで並んで駅へ向かいながら、
ごく自然に歩幅が揃う。

手は繋がない。

けれど、肩と肩の距離は、
以前よりほんの少しだけ近かった。
< 151 / 200 >

この作品をシェア

pagetop