今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜


快浬さんの部屋は、
驚くほど『暁のショールーム』に近かった。

無駄なものが少なく、でも冷たくはない。

リビングと一体になったキッチンには、
もちろん『今日はここまでライト』がついている。



「本当に、自宅にもつけてるんですね」



「開発者ですから。責任を持って、自分の暮らしでも試さないと」



キッチンカウンターには、二人分のまな板と包丁。



「春日さんは、野菜をお願いしてもいいですか。僕はスープを担当をします」



「分かりました」



並んで立つキッチン。

音楽は、小さくジャズ。

玉ねぎを刻む音。

包丁がまな板を叩くリズム。

ときどき、
手がぶつかりそうになって、お互いに笑う。



「こうして一緒に料理するの、なんだか不思議な感じです」



「いつも、図面の中でしか料理してないですからね、僕たち」



「たしかに」



コンロに火をつけ、
鍋の中で野菜が炒められていく。

部屋の中に、少しずついい匂いが満ちていく。

スープが煮え、
メインディッシュもオーブンから出てきたころ。

ダイニングテーブルの上には、
簡単だけれど、
どれも手をかけた料理が並んでいた。



「いただきます」



ふたりで手を合わせて、スープを一口。



「……おいしい」




「よかった。これで、〝今日はここまででも大丈夫〟と思ってもらえたら、開発者冥利に尽きます」



「この一杯飲んだら、〝明日も頑張ろう〟って思えてきました」



「それなら、成功です」
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