今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜
いよいよリハーサルが始まった。
今日撮るのは、
夫婦がそれぞれ帰宅してから、
キッチンで一緒に夕食を仕上げ、
ライトを見て、
ナレーションに『無理しないで』と言われるまでの一連の流れ。
「じゃあ、最初のカット。奥さんが先にキッチンにいるところに、旦那さんが帰ってくるシーンからいきます」
監督の指示で、選手夫妻が所定の位置につく。
その少し離れたモニター前に、
快浬さんとわたしは並んで立っていた。
「はい、カメラ回してー」
〝ただの上司と部下〟らしく、
肩が触れない絶妙な距離感。
でも、
画面の中で並ぶ夫婦の姿を見るたび、
どこか自分たちを重ねてしまう。
「今日もお疲れさま」
「お疲れ。子どもたちはもう寝た?」
「うん。あとはこのスープ温めて、サラダ盛りつけるだけ」
夫婦の自然な掛け合いに、わたしは思わず頷く。
「分かる……」
小さく漏れた声に、
隣で快浬さんがくすっと笑った。
「〝分かる〟って、完全に自分のことみたいに言いましたね」
「いえ、その、ユーザーインタビューで、よく聞く会話なので」
苦しい言い訳をしてみせるが、
快浬さんの口元の笑みは消えない。
モニターの中。
夫婦が食卓を囲み、ライトがふわりと点く。
『無理しないで』
SEとともに、柔らかい光。
奥さんがほっと息をつき、
旦那さんと顔を見合わせる。
「ねえ、まだ洗濯もあるし……」
「うん。おれがやるよ」
ゆっくりと、自動で水洗いが行われ、
奥さんが〝一人じゃない〟と実感する。