今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜
午後。
いよいよラストカットの撮影。
「最後は、キッチン全体を引きで撮るカットになります」
監督が、セットの位置を微調整していく。
「せっかくなので、開発者のおふたりにも、エキストラで入ってもらえませんか」
「え?」
快浬さんとわたし、同時に目を丸くする。
「後ろのほうでいいので。〝開発者も一緒に見守ってる〟みたいな」
「それなら、快浬さん一人で――」
「いやいや、春日さんも一緒に」
監督が、あっさり言う。
「〝あのふたりありき〟の企画だって、みんな知ってますから」
結局、キッチン脇のカウンター近くに、ふたり並んで立つことになった。
「じゃあ、位置決めますねー」
カメラマンが、
ふたりの肩の位置を軽く押して調整する。
「もうちょい近くてもいいですよ。夫婦感出したいんで」
「夫婦じゃありません」
反射的に出た言葉に、周りのスタッフが笑う。
「はいはい、分かってますよー。〝まだ〟ね、〝まだ〟」
〝まだ〟を二度も強調されて、
わたしの顔がさらに熱くなる。
「じゃあ、本番いきまーす」
カウントが始まる。
モニターの中では、
サッカー選手夫妻がライトを見上げ、
ほっと笑う。
その後ろのキッチンカウンター。
少し引きの画には、開発者のふたりが、
静かにその様子を見守っている。
ほんの数秒。
それでも、
レンズ越しに切り取られたその距離感は、
『ただの上司と部下』にしては、
少しだけ近すぎたかもしれない。
「はい、カット!お疲れさまでしたー!」
スタジオに、拍手が広がる。
すべての撮影が終わったあと。
セットの片付けが始まり、
徐々にスタジオから人が減っていく。