今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜
その日の夜。
フロアの電気が徐々に落ちていく。
わたしは、最後のメールを送り終え、
ふうっと息をついた。
机の上には、いつかの付箋が、
新しいメモに変わっていた。
『今日はここまでライト 22:30 シェア一強でも、残業一強にはなれません』
思わず、くすっと笑う。
顔を上げると、少し離れたデスクで、快浬さんがパソコンを閉じていた。
「お疲れさまでした」
「お疲れさまです」
並んでエレベーターに向かう。
「〝暁一強〟、どう感じましたか」
「正直に言えば、まだちょっと、ピンと来てません」
「僕もです」
快浬さんは、少しだけ肩をすくめる。
「でも、〝二位から一位になる〟よりも、〝強くなりすぎて誰かに無理をさせてないか〟のほうが、今は怖いかもしれません」
「だからこそ、〝今日はここまで〟って言ってくれるライトを作ったんですよね」
「ええ」
エレベーターの扉が開く。
「会社にも、人にも、〝ここまで〟って線を引いてあげられるように」
乗り込んで、扉が閉まる直前。
快浬さんが、小さく付け足した。
「シェアが一強になっても、〝ふたり〟は、ちゃんと対等でいたいですから」
それは、
仕事と恋の両方に向けた言葉に聞こえた。
わたしは、笑ってうなずく。
エレベーターが静かに降り始める。
未来に向かって続いていく線は、
もう『僅差』のグラフではなかった。
『暁一強』と呼ばれてもおかしくない数字と。
〝ふたり一緒に〟という、
小さな決意の線が、確かに並んで引かれていた。