今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜
「あとひとつだけ、どうしても入れたい仕掛けがあります」
「まだあるんですか」
「あります」
快浬さんは、新しい紙を一枚取り出した。
そこには、シンプルな言葉が一行。
『二人専用ここからスイッチ』
「〝ここからスイッチ〟?」
「はい」
快浬は、少し照れたように笑う。
「仕事の話を、意識的に〝ここまで〟にするためのスイッチです」
「……」
「リビングとキッチンの間に、小さなスイッチを付けておいて」
「そこをオンにしたら、〝仕事の話は禁止。ふたりの話だけをする時間〟ってルールにしたい」
図面の中に描かれた、
小さなスイッチのマーク。
それは、機能としては何も制御しない、
ただの〝約束の印〟だ。
「そんなの、普通の図面には載らないですよ」
「普通の図面じゃないので」
快浬さんは、真剣な目で言う。
「〝家族の時間を守る〟を売りにした僕たちが、お互いを一番追い込むなんて、いちばんやってはいけないことですから」
「だから、ふたりでちゃんと〝ここまで〟って決められるスイッチが、欲しいんです」
わたしは、その紙をそっとなぞる。
「……はい」
「それ、つけましょう」
声は、自然と柔らかくなっていた。