今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜
商品開発部に配属が決まったあと。
経営再建のため、
新商品開発をするようにと、
父でもある社長に言われた。
「自分で戦えるチームを作れ」
そう言われた瞬間、
内ポケットの名刺を思い出した。
デスクの引き出しに放り込んでいたカードの束から、
白地に淡い色のロゴが入った一枚を探し出す。
『春日小春』
この名前を、
ちゃんと読むのは二度目だった。
——彼女みたいな『暮らしを言葉にする人間』が、
暁には決定的に足りていない。
そう思った。
技術もある。
知識もある。
でも、
〝誰のために作るのか〟を執拗に問い続ける人間が、驚くほど少ない。
だから一位から落ちたのだと、
外側から眺めていてずっと思っていた。
人事を通さずに直接声をかけるのは避けたかったので、
暁の採用チームと顔の利くヘッドハンターにだけ、
『こういう人がいたら紹介してほしい』と条件を伝えた。
ユーザーインタビューを自分の言葉で語れる人。
『なんとなく』ではなく、
『こういう暮らしを変えたい』と具体的に言える人。
そして、彼女の名刺を、条件の最後にそっと添えた。
「……こういうタイプです」
ヘッドハンティングというより、
あれはほとんど〝拾い上げ〟だったのかもしれない。
きっと今の会社で、
真ん中より少し外れたところに立っているだろう若手を、
もう少し広い場所に連れていきたかった。