今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜




「面白いですね」



翌日の企画会議で、
わたしのプレゼンを一通り聞き終えた快浬さんは、
まずそう言った。

会議室の窓からは、
春の薄い陽光が差し込み、
白板に映ったスライドを明るく照らしている。

商品企画部、開発本部、
営業部から集まった十数名の視線が、
一斉に快浬さんに注がれた。



「キッチンを〝ステージ〟として捉える発想は、うちにはなかった。レイアウトや収納だけでなく、照明や視線の抜けを含めたトータルデザインとしての新しい切り口は、評価します」



わたしは、
少しほっと息をつきかけ――
次の言葉で、胸を締めつけられた。



「しかし、現実的ではありませんね」



「もしかして、コストの話ですか?」



「それもあります。ですが、それ以前に、メッセージが抽象的すぎる。『ただいまからおかえりまで』というコピーは、情緒的で美しい。けれど、その一言で、お客様は『これは私のキッチンだ』と即座に理解できるでしょうか」



営業部長も、腕を組んでうなずく。



「うちの営業は、ショールームで一日に何十組も接客する。そのときに、『舞台です』『ステージです』だの説明されても、具体的なメリットが伝わりづらい」



「ですが――」



わたしが反論しようとしたとき、
快浬さんが手を挙げた。



「僕は、コンセプト自体は悪くないと思っています。問題は、それをどう分解し、〝買う理由〟に落とし込むかです。たとえば、『子どもの〝ただいま〟が聞こえるキッチン』なら、対面レイアウトと視線の確保が具体的な機能になります」



白板に、さっとマーカーで書く。



「『片づけ終わりが一目で分かるキッチン』なら、シンクと作業台の一体成形や、引き出しの〟定位置収納〟が武器になる。春日さんが語った〝ステージ〟の情緒を、いくつかの〝戦える言葉〟に翻訳する必要がある」



そこまで言ってから、
快浬さんはわたしに視線を戻した。



「それを、あなたにやってほしい」



良かった、と安心しかけた瞬間、
追い討ちが来た。



「ただし、コンセプトの実現に必要だと主張する機能は、すべてコストと工数を添えて提案してください。『あったらいいな』の機能は、もっと後です」



胸の奥に、悔しさがこみ上げる。



「……分かりました」



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