今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜
「じゃあ、乾杯!」
グラスが一斉に打ち鳴らされる。
ビールを一口飲んだ瞬間、
緊張で固まっていた肩の力が少し抜けた。
「春日さん、工場どうだった?」
「ライン長、怖かったでしょ?」
「快浬さんと二人きりで工場回るとか、なかなかの試練だよね」
隣や向かいから、次々に声が飛んでくる。
「怖かったですけど……なんというか、全部〝本気で言ってる〟感じで。数字で殴ってくるタイプかと思ったら、現場の一言もちゃんと拾ってて」
「でしょ。あの人、見た目と第一声で損してるんだよなあ」
高梨さんが唐揚げをつつきながら笑う。
「でもさ、〝机上の空論はいらない〟って面と向かって言われたとき、ちょっとぐさっときました」
「それは、みんな一回は通る洗礼だから」
別の先輩がビールを飲み干しながら言う。
「企画って、〝こうだったらいいな〟を語る仕事だけど、快浬さんは〝本当にできるのか〟の現場側の神様だからさ。そこで最後まで一緒にやろうとしてくれる人には、ちゃんと甘くなるよ」
「……まだ〝甘くなった〟ところは見てないです」
「これからでしょ?」
そんな会話をしているうちに、
テーブルの上には次々と料理が運ばれてくる。
刺身の盛り合わせ、
出汁巻き玉子、焼き鳥、サラダ。
「春日さん、好き嫌いある?」
「いえ、ほとんど何でも食べます。ただ、料理のスキルだけは……」
「さっき自分で言ってたな。片づけ特化型なんでしょ」
高梨さんがくすりと笑う。
「うちの部署、料理ガチ勢多いから、そのうち誰かが教えてくれるよ。ほら、開発本部長とか」
からかうように言われ、
わたしは思わずグラスを握りしめた。
——料理教室で、
あんなに自然に教えてた人だもんな……。
あの日のエプロン姿と、
鍋から立ちのぼるレモンの香りが、ふいに蘇る。