今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜
「春日さん、こっち」
高梨さんが人混みから少し離れた、
街路樹の下を指さした。
「タクシー拾う前に、ちょっとだけ。今日は〝先輩モード〟発揮していい?」
「先輩モードってなんですか」
「仕事や恋に会社事情まとめて相談乗ってあげるってことよ」
からかう口調なのに、
その目はどこか真剣だった。
「快浬さんのことも、暁のことも、たぶんちょっと聞いといたほうがいいからさ」
コンビニの前でホットコーヒーを二つ買い、
近くのベンチに並んで腰を下ろす。
「まずは仕事の話からね」
高梨さんは、紙コップのフタを指でくるくる回した。
「春日さん、〝今回の新商品開発〟が、ただの新商品じゃないのは知ってる?」
「売上の柱にしたいっていう話は、ちらっと……」
「うん。あれ、実は〝経営再建のラストチャンス〟でもある」
「ラスト、チャンス……」
「暁、ここ数年ずっとじわじわ数字落としてるのは知ってるよね」
会議資料で見たグラフが頭をよぎる。
右肩下がりというほどではないけれど、
横ばいの線が少しずつ下へ沈んでいくカーブ。
「で、役員たちは〝次期社長候補として快浬さんを据えて、V字回復させたい〟って建前で動いてる。けど、本音では〝本当にできんの?〟って半信半疑」
「……実績が、まだないからですか」
「そう。快浬さん、現場の信頼はあるけど、〝経営数字を動かした実績〟はまだ薄いからね。だから今回のプロジェクトは、〝新商品開発〟でありつつ、〝快浬さんを社長にするかどうかの試験〟でもある」
わたしの手の中の紙コップが、
きゅっと音を立てた。