今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜
「もし結果が出なかったら?」
「〝社長の話は一旦白紙〟ってことになる」
高梨さんは、夜空を見上げながら続ける。
「その場合、表向きは〝現場強化のための配置転換〟って名目で、快浬さんは郊外の工場に飛ばされるプランが、さらっと出てる」
「……飛ばされる?」
「今も工場にはよく顔出してるけど、そうじゃなくて、〝本社から外す〟って意味のほうが強い」
会社の空調の音と、工場の乾いた空気。
午前中の工場見学で感じた〝現場の重み〟が、
別の意味を帯びて胸にのしかかる。
「役員の中にはね、〝創業家の坊ちゃんに現場預けるのはまだしも、経営は任せられない〟って思ってる人もいる」
「……そんな」
「どこの会社にもいるでしょ。〝若いトップ候補〟に冷たい目を向ける人たち」
高梨さんは、わざと軽く言った。
「だからさ。今回の〝片づき終わりの光〟は、単なるコンセプトじゃなくて、〝この会社がこれからも台所で生きていけるか〟の試験でもある」
紙コップの中で、
コーヒーの表面が小さく揺れた。
「春日さんの〝終わりの自信〟って言葉、あれは、実は快浬さんにとっても〝自分の終わりをどこに引くか〟の鍵になってる」
「快浬さんの……終わり」
「そう。〝社長になる〟っていう道の終わりを、自分で掴みにいくかどうかのね」
高梨さんは小さく息を吐いた。
「だからと言って、〝プレッシャーに感じろ〟って意味じゃないよ。むしろ逆」
「逆?」
「このプロジェクトを〝快浬さんの試験〟だけにしちゃうと、たぶん誰も幸せになれない」
高梨さんは、視線をわたしに戻した。
「だから春日さんには、〝自分の仕事として〟この企画をやってほしい。〝誰かの試験を助ける〟んじゃなくて、〝自分が信じるキッチンを一緒に作る〟ってスタンスで」
その言葉が、静かに胸にしみていく。