今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜



「うちは、今、首位の座をTOHO《トーホー》に明け渡してしまっている。それについては、ご存じですか?」



「はい……ニュースで」



「だが、ランキングの数字そのものより、私が恐れているのは別のものです」



社長は、
テーブルの上のタブレットを操作し、
一枚のグラフを表示した。

曲線がゆっくりと、
しかし確実に右肩下がりになっている。



「これは、ここ十年の〝指名買い率〟です。〝キッチンなら暁〟と言ってくださるお客様の割合。売上よりも先に、ここが下がり始めました」



わたしは、画面の青いラインを食い入るように見つめた。

かつては七割近かった数字が、
今は半分を切っている。



「競合さんが、新しいサービスやデザインをどんどん出されていますから……」



「ええ。サブスク型メンテナンス。スマート家電連携。オンライン相談。どれも素晴らしい取り組みです。うちも真似しようと思えば、できないことはない」



社長は、そこで一度言葉を切り、
わたしをまっすぐ見た。



「しかし、〝暁がやる意味〟は、どこにあるのか。そこを見失ったまま真似しても、きっと誰の心にも残らない。そう思いませんか?」



問われているのか、試されているのか。

わたしは、喉がからからに乾くのを感じながら、
ゆっくりと口を開いた。



「……はい。『どこでもいい』と『ここがいい』の差は、小さな使い勝手や、日々触れるときの感情の積み重ねだと思います。そこを言葉にして、形にできるかどうかが、暁さんが今後〝選ばれる理由〟になるはずです」



自分でも驚くほど、すらすらと出てきた。

社長の目が、ほんの少しだけ柔らかくなる。



「だから、春日さん。あなたをお呼びしました」



社長室の空気が、少しだけ変わった気がした。
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