今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜
「で、ここからが恋バナ編」
空気を少しだけ変えるように、
高梨さんが微笑む。
「さっきの話聞いて、〝快浬さんが失敗したらどうしよう〟って顔になってた」
「……なってました?」
「うん。あれは完全に、〝好きな人の人生も背負おうとしてる人〟の顔」
図星を突かれて、わたしは言葉を失う。
「でもね、〝この新商品がうまくいかないと、快浬さんが社長になれないから頑張る〟っていう方向で恋しちゃうと、たぶん、春日さんの心が先に潰れる」
「……」
「あの人は、〝自分の責任は自分で取るタイプ〟だからさ。社長になれなかったらなれなかったで、〝自分の力不足だ〟って、勝手に背負い込むよ」
それが想像できてしまって、余計に苦しくなる。
「だから、もし好きでいるなら」
高梨さんは、紙コップをゴミ箱に投げ入れ、
少しだけ真面目な目をした。
「〝社長になれたら一緒にうれしい〟〝飛ばされそうになったら一緒に抗《あらが》う〟くらいの、〝隣を走る人〟でいてあげてほしい」
「隣を、走る人……」
「〝自分の身代わり〟じゃなくて、〝ちゃんと自分の足で走ってる人〟のほうが、快浬さんは絶対に好きになるから」
その一言が、妙に胸に残った。
「……そんな重いもの、私に背負えるかな」
ぽつりとこぼすと、高梨さんは首を横に振る。
「背負うんじゃなくて、〝一緒に持つ〟んだよ」
「一緒に、持つ」
「快浬さんの〝社長になるかもしれない未来〟も、〝工場に飛ばされるかもしれない未来〟も、〝どっちでも一緒に考えられる人〟でいられたら、たぶん、それが一番強い味方」
会社の将来、好きな人の立場、自分の仕事。三つ巴でぐるぐるしていたものが、少しだけ並べて眺められるようになった気がした。