今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜
テストがすべて終わり、
ショールームの灯りが一段階落とされたころ。
「ねえ、小春ちゃん」
美桜さんが、隣に並んで立ちながら小声で言う。
「今日、いい顔してたよ」
「いい顔?」
「うん。〝コンセプトのためのユーザー〟じゃなくて、〝暮らしのためのコンセプト〟になってた」
その言葉は、
今日一日の疲れをそっとほどくような、
やさしい響きだった。
「快浬もね、さっきのライトのデータ見ながら、ちょっとだけ〝ホッとした〟顔してた」
「本当ですか」
「うん。〝失敗したらまた工場行き〟ってプレッシャー、あの子なりにすごく感じてるから」
わたしは、実験用キッチンの前に立ち、
もう一度、ライトを見上げた。
小さくて、主張しない光。
でも、確かにそこにいて、
『ここまででいいよ』と静かに伝えてくれる存在。
——誰かの一日の終わりに、
この光があったら。
——その〝誰か〟の中に、
快浬さん自身も入ってくれたら。
そんなことを思いながら、
わたしはそっと照明のスイッチを落とした。
テストユーザーの夜ごはんが終わったあとの静かなキッチンに、
『今日はここまでライト』の余韻だけが、
やわらかく残っていた。