今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜

役員会議室のドアを開けると、
空気がいつもより重く感じられた。

長いテーブルの奥、
社長席には社長が座っている。

快浬さんの父であり、暁の最高責任者。

その隣には、
副社長、経営企画担当の専務、財務、営業、本部長クラスの面々がずらりと並ぶ。



「それでは、競合他社の新シリーズ投入に関する緊急会議を始めます」



経営企画の専務が、淡々と口火を切る。



競合の新シリーズの特徴、価格帯、ターゲット層、発売スケジュール。



スライドが次々と映し出される。



「〝家事時間の可視化〟というコンセプトは、我々が検討していた方向性と非常に近しい」



財務担当役員が、皮肉混じりに言う。



「向こうは、AIだのアプリ連携だの、分かりやすいキーワードでシンプルにまとめてますがね」



「暁も、〝今日はここまでライト〟というネーミングでやろうとしているのでしょう」



別の役員が、視線を快浬さんに投げる。



「しかし、〝今日はここまで〟などと言っている余裕が、我が社にあるのかどうか」



微かな笑いが、テーブルの一角で漏れた。



「やめたまえ」



社長の低い声が、その笑いを断ち切る。



「今は、誰かを茶化している場合ではない」



背筋の伸びた姿勢。

白髪混じりの髪。

社長の声には、静かな怒気と同時に、
確かな重みがあった。



「快浬」



名を呼ばれ、快浬さんが立ち上がる。



「はい」



「お前のプロジェクトが、〝競合の後追い〟なのか、それとも〝暁らしい一手〟になっているのか。ここで示してみろ」



その言葉は、厳しくも、
どこか信じている人間に向けるような響きだった。



「承知しました」



快浬さんは、深く頭を下げると、
プレゼンテーション用の席に移動した。
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