今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜
「開発本部の春日です。本日は、〝今日はここまでライト〟を中心とした新キッチンシリーズのご提案をさせていただきます」
わたしは、手の震えを必死に抑えながら、
最初のスライドを映した。
コンセプト、ターゲット像、テストユーザーの声、
ライトによる〝罪悪感の軽減〟データ。
その横で、快浬が要所要所を補足していく。
「競合は、〝可視化〟と〝時短〟を前面に出していますが、我々は〝心の着地〟にフォーカスしています」
「〝終わりの自信〟という言葉をキーにして、ユーザーの〝やり残し感〟をどこまで減らせるか。データと実際のユーザーインタビューから、こういった傾向が見られました」
スライドに映るグラフとコメント。
役員たちの視線が、一瞬だけ集中する。
だが、途中から、
営業担当の常務が、
あからさまに腕時計をちらりと見た。
「その、〝終わりの自信〟とやらが、いったい売上にどれほど寄与するのかね。やり残したままじゃ生活は豊かにならん」
常務が、半ばあくびを噛み殺しながら言う。
「前回の〝プレミアムライン〟も、〝暮らしを豊かにする〟という立派なコンセプトでしたが、結果はご存じの通り。また同じく、これを家《うち》にいれようとまでは考えないだろう」
会議室の空気が、ぴんと張りつめる。
「また、〝快浬君の理想論〟で終わるんじゃないかと、現場からも声が上がっている」
「現場から、とは?」
社長が、目だけを動かして常務を見る。
「営業部隊ですよ。〝本当にこんな光で、シェアが取れるのか〟とね」
皮肉な笑いが、またいくつか漏れる。
「暁は今、目に見えるほどの数字が欲しい。〝気持ちが楽になる〟などという、曖昧な価値だけで勝負できるほど、甘い市場ではないでしょう」
わたしは、拳を握りしめた。
悔しさと、怒りと、何かを守りたい感情が、
一気に込み上げる。