今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜
会議室を出るとき、背後から、
ささやくような声が聞こえた。
「結局、また坊ちゃんプロジェクトだよな」
「社長もどう責任を取るおつもりか」
「現場の汗知らないから、ああいう夢みたいな光をつけられるんだ」
わたしの肩が、かすかに震えた。
「春日さん」
隣で歩いていた快浬さんが、小さく呼びかける。
「気にしないでください。ああいう声は、いつでも出てくるものです」
「気にしますよ」
思わず、立ち止まってしまう。
「だって、〝現場の汗知らない〟なんて、快浬さんに一番似合わない言葉じゃないですか」
快浬さんが、少しだけ目を見開く。
「工場にだって毎週通って、ショールームでお客様の声も聞いて。テストユーザーさんの夜ごはんに付き合って、〝ここまでライト〟のデータ一つひとつ見て」
言いながら、自分でも胸が熱くなっていく。
「そんな人を、〝また失敗するんじゃないか〟なんて笑う人たちのほうが、よっぽど何も見てないです」
廊下に、しばし沈黙が落ちた。
「……ありがとうございます」
快浬さんの声は、少しだけ掠《かす》れていた。
「春日さんが、そう言ってくれるなら。少なくとも、〝チームの中では〟信頼されていると、受け取ってもいいですか」
「〝チームの中〟どころじゃないです」
口が勝手に動く。
「私は、誰が何と言おうと、快浬さんのやり方が間違ってるとは思いません」
その瞬間、
自分がどれだけ本気でそう思っているかに気づき、
顔が一気に熱くなる。
でも、取り消したくはなかった。