今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜

会議室を出るとき、背後から、
ささやくような声が聞こえた。



「結局、また坊ちゃんプロジェクトだよな」



「社長もどう責任を取るおつもりか」



「現場の汗知らないから、ああいう夢みたいな光をつけられるんだ」



わたしの肩が、かすかに震えた。



「春日さん」



隣で歩いていた快浬さんが、小さく呼びかける。



「気にしないでください。ああいう声は、いつでも出てくるものです」



「気にしますよ」



思わず、立ち止まってしまう。



「だって、〝現場の汗知らない〟なんて、快浬さんに一番似合わない言葉じゃないですか」



快浬さんが、少しだけ目を見開く。



「工場にだって毎週通って、ショールームでお客様の声も聞いて。テストユーザーさんの夜ごはんに付き合って、〝ここまでライト〟のデータ一つひとつ見て」



言いながら、自分でも胸が熱くなっていく。



「そんな人を、〝また失敗するんじゃないか〟なんて笑う人たちのほうが、よっぽど何も見てないです」



廊下に、しばし沈黙が落ちた。



「……ありがとうございます」



快浬さんの声は、少しだけ掠《かす》れていた。



「春日さんが、そう言ってくれるなら。少なくとも、〝チームの中では〟信頼されていると、受け取ってもいいですか」



「〝チームの中〟どころじゃないです」



口が勝手に動く。



「私は、誰が何と言おうと、快浬さんのやり方が間違ってるとは思いません」



その瞬間、
自分がどれだけ本気でそう思っているかに気づき、
顔が一気に熱くなる。

でも、取り消したくはなかった。
< 78 / 200 >

この作品をシェア

pagetop