今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜
会議室フロアから少し離れた小さな会議室に入り、
ようやく二人きりになった。
「春日さん」
「はい」
「ひとつだけ、共有しておきたいことがあります」
快浬さんは、ホワイトボードの前に立ち、
ペンを手に取る。
だが、何も書かないまま、しばらく沈黙した。
「……実は、〝プランB〟も用意しています」
「プランB?」
「今日のプレゼンは、〝正攻法のプランA〟でした。コンセプトとテストデータを武器に、暁らしい価値をそのまま形にするやり方です」
「はい」
「もし、役員会での抵抗がここまで強くなければ、そのままAで押し切るつもりでした」
ペン先が、ホワイトボードの端を軽く叩く音がする。
「でも、現状を見る限り、〝数字の論理〟だけでは押し返しきれない」
「だから、プランBを?」
「ええ」
快浬さんは、ゆっくりとこちらを振り向いた。
「ただし、まだ〝ここで何か〟を明かす段階ではありません。もう少し、努力と忍耐が必要です」
「忍耐……」
「プランBは、〝ライトだけの話〟では終わらないかもしれません」
その曖昧な言い方に、
何か大きな構想の影が見えた気がした。
「いずれにせよ、プレゼンで指摘された点は、すべて潰し込む必要があります」
快浬さんは、
ペンをキャップで閉じ、深く息を吸った。
「〝また失敗するんじゃないか〟と言わせないためにも」
その言葉は、
誰かに向けたものというより、
自分自身への宣言のようだった。