今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜
次に目を開けたとき、
そこは見慣れない天井だった。
白い天井。淡いグレーのカーテン。
鼻先には、どこか懐かしい、
出汁とレモンが混ざったような香りが漂っている。
「……ここは」
起き上がろうとすると、
掛け布団がふわりと肩から滑り落ちた。
ソファベッドらしい感触。
リビングの一角に簡易ベッドが置かれ、
その横にサイドテーブル。
そこに、
見慣れた手帳と社員証が置かれていた。
「気がつきましたか」
低い声に振り向くと、
キッチンとリビングの境目に快浬さんが立っていた。
エプロン姿で、片手にはマグカップ。
「か、快浬さん……?」
「ここは、うちです」
「えっ、えっ、なんで」
「オフィスで倒れました。救護室で少し様子を見ましたが、熱があったので。時間も遅く、春日さんの家の場所も分からなかったので、いったんここに」
淡々と説明されても、頭が追いつかない。
「病院は……」
「簡単な診察を受けました。過労と軽い脱水。入院までは必要ないとのことでした」
「ご迷惑を……」
言いかけたところで、
快浬さんの眉がぴくりと動いた。
「その台詞は禁止です」
「え?」
「〝ご迷惑を〟と言う前に、まずは自分の身体の心配をしてください」
いつもの冷静な声なのに、
その奥に押し殺した苛立ちのようなものが混じっていた。
「この二週間、何度か〝勤務時間の上限〟を超えそうなログが出ていたことは把握していました。本来であれば、もっと早く止めるべきでした」
「それは、私が勝手に――」
「それでも、管理監督者としての責任は、私の側にもあります」
きっぱりと言い切られ、わたしは言葉を失う。