今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜



「工務店、どう?」



「まあ、楽しいよ。家の図面見るの、昔から好きだったし」



テーブルに広げられたスケッチブックには、
手書きの間取りがいくつも並んでいる。



「相変わらず、〝キッチンの位置から決める派〟?」



「そうそう。キッチン見れば、その家の暮らし方だいたい分かるからね」



その感覚が懐かしくて、わたしはつい、
仕事モードで身を乗り出す。



「最近、多いのはどんな相談?」



「共働きの夫婦かなあ。〝二人で立てるキッチンがいい〟って言うんだけど」



「でも?」



「実際に図面引いてみると、通路狭くて〝近すぎて喧嘩するライン〟に入りがちなんだよね」



秋人は、ペンで細い通路をなぞる。



「これくらいの幅だと、すれ違うたびにぶつかってイライラするでしょ」



「あー、分かる」



「でも広くしすぎると、今度は〝一緒に作ってる感〟が無くなる」



ペンが、少し広めの通路を描く。



「だから、〝物理的にちょうどいい距離〟って、実は結構難しいんだよね」



——〝ここまで〟って、
時間だけじゃなくて、距離にもあるんだ。


わたしは、メモ帳を取り出して走り書きする。



「何それ、仕事?」



「うん。今、新しいキッチンの企画、開発も任されちゃってて」



正直に話すと、秋人が少し驚いた顔をする。



「暁で、そんなことまでやってるんだ。すごいな」



「〝そんなことまで〟ってなんか照れるじゃん」



笑い合いながらも、
ふと、過去のことが頭をよぎる。

別れたとき、秋人は言った。



『一緒に図面引くのは楽しいけど、疲れたときもずっと〝仕事脳〟のままでいるの、正直しんどい』



今なら、少し分かる気がする。
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