余所者-よそもの-【 2 】
私が手を上げてタクシーを止めると、開いたドアにゆっくりと乗り込んでから、私を座席に座らせた。
タクシーのおじさんは血で汚れた私をミラー越しに『シート汚すなよ』って顔つきで睨み付けてから「どこまで?」と尋ねた。
「んー、ちょっと待ってな。どこだっけ、住所……」
スマホを忙しくスクロールさせた潤は「ダメだ、出ない」と諦めて、私の方を振り返った。
「ユキんちまでの道案内できる?」
「……ユキさんの家?」
ユキの家、だと?
「え、ユキさんの家に行くんですか?今から?なんで?」
「休めるところ行くっつったろ」
「いや、でも。……っていうか私、ユキさんのマンションの鍵持ってきてませんし」
「それなら心配ご無用」
ふっと不敵に笑った潤の背広ポケットから出てきたのは、黒くて丸い形をしたプラスチックの塊。
潤はまるでいたずらっ子のようにニッコリと笑って、手にプラプラとユキの家の合鍵をぶら下げて、私に見せびらかした。
「な、なんで潤さんが持ってるんですか?」
「さっきカナコちゃんの部屋上がった時に取ってきた」
呆気に取られる私に、タクシーのおじさんの『早く行先を言え』といった鋭い視線がビシビシ突き刺さる。
「……そこをまっすぐに、次の信号を左折してください」
私はもう観念をして、通い慣れたユキの自宅マンションまで案内した。
目的地に到着し、タクシーのドアが開く。
先に外へ降りた潤は、当然のように再び私をお姫様抱っこの形で運んだ。
「いいです、大丈夫です、歩けます」と何度断っても頑なに引かないものだから、きっとこれも潤の性分なんだろうと受け入れることにした。