余所者-よそもの-【 2 】
――夜の路地。
暗い夜空の手前から降り注ぐ黄色い街灯の光。
スポットライトのように照らされた、潤の端正な横顔。
私はじっと彼の腕の中から見上げていた。
「……潤さん、ごめんなさい」
「何をカナコちゃんが謝ることがあんの」
「この状況の全部です」
「どーしてそうも全部丸ごと自分事化しちゃうかな」
「だって」
「一つ言っておいてやる。どんな理由があれ、男が女の子を殴っていい理由なんかこの世に一つもない。男の身体が女より強く出来てんのは、女の子を守るためだ」
潤らしいなと思った。
思えば、出会った日から潤はずっと紳士だった。
女の子への丁重な扱いは、彼にとって重要なポリシーなのかもしれない。
「鼻血止まった?」
「はい。ハンカチ……すみません」
「いーよ、そんなの」
もう使い物にならない高級なハンカチ。
今度新しいものを買って、返そう。
潤はやがて大通りまで出ると足を止めた。
きっと重いだろうに、ここまで愚痴一つ零さないばかりか、重たそうな仕草一つ見せずに涼しい顔をしてここまで歩いてきた。
「潤さん、私もう降ります」
「ううん、大丈夫。それよか片手上げれる?」
「手?」
「あのタクシー捕まえてほしい」
行き交う車のテールランプに光った潤の顔。
視線の先を辿ると、一台のタクシーがこちらに向かって走ってきていた。