余所者-よそもの-【 2 】
俺は化学準備室へと向かった。
改装を幾度と繰り返された校内で、唯一手つかずのここ。
俺の隠れ家。
勝手に持ち出した鍵を差し込み、滑りの悪い木の扉を少し持ち上げながら引いてやっとのことで開ける。
「さーて。今日は誰ちゃんだっけ」
わくわくと女の子を待った。
「お待たせ!潤くんっ」
「よ!」
可愛い女の子が俺を呼ぶ声。
俺は三度の飯よりこれが好き。
「何してたの?」
「今月のテストの範囲見てた」
「そっか。もうテスト期間入っちゃうね。私も潤くんと遊べるのは今日が最後だなぁ。勉強しなきゃ」
くるくると丁寧に巻かれた髪を指先で遊ばせながら口を尖らせる女に、俺は愛想笑いを返す。
俺にはもう勉強への情熱はなかった。
それでもテスト範囲を確認するのは、うざったい追試を免れたいだけだ。
でも、俺のような存在はこの学校においては異分子。
ここに居る育ちの良いお嬢様も、俺とこんなところで油を売っている暇なんてないはず。
それでも俺のところに来ちゃうんだから、なんて健気で可愛い生き物だと思う。
「お弁当、作ってきたよ!」
女の子がピンクのかわいらしい弁当箱の蓋を開けると、手間暇かけて彩り豊かに飾られたお弁当がこんにちわ。
俺の為に早起きをして、俺の為に一生懸命に作ってくれた料理。
「すげぇ旨そう。ね、早く食いたい」
「待ってね、待ってね」
嬉しそうに肩をすくめて、ワタワタと箸を巾着から取り出す女をじっと見つめる。
差し出された箸を受け取る時は、彼女の指先に少しだけ触れるようにして、言葉とは裏腹にゆっくりと、あえて多少の時間をかけた。
「ありがとう」
目を見つめて礼を言えば、女の子の白い頬がほんのり赤く染まった。
その可愛い反応を確かめてから、受け取った箸でメインのおかずを一口目にして、口に大きく放り込む。